ど~も守屋です。
ご無沙汰しております。
今日はもう、くだらない前置きは無しにして、皆さんお待ちかねの
6月1日(水)上映開始の映画
「 デッドプール 」
のPR用巨大フィギュアを製作したんで、その様子を大公開しちゃいますよ。
今回のPRの方法は身長7mの巨大DEADPOOL像を製作し、それをそのまま巨大なトラックの荷台に設置し、街中を走り回ろうではないか!! というもの。
このパターン、覚えていらっしゃる方もいるのでは?
過去にウチでは、、、
http://zoukeikanban.com/blog/with/
映画 ウォーキングwithダイナソー!!! その②
http://zoukeikanban.com/blog/with_1/
約2年前にこんなバカげたとんでもない企画を20世紀フォックス映画の宣伝担当のO氏から頂き
無我夢中で造ったのを思い出します・・。
まだ前回は巨大な箱型のアクリルケースに恐竜を入れるカワイイ設定やったんやが、
今回は完全に大気むき出しオラオラ状態での積載だという事で、これまた20世紀フォックス映画宣伝室さんのクレイジーな発想に度肝を抜かれました。 (O氏、どうかしてるゼ!)
早速、御見積。
見積時、製作必要納期を「60日」と設定させて頂き提出。
ありがたく発注頂ける事に。
ところが・・・・・・
中間業者の手違いで約40日ほどの納期で製作せにゃならん事が発覚!!
は、は、20日も短縮!?
当然、もうこのプロジェクトは漂流する氷山の如く、ズンズン押し迫ってくるではないか!!
「どうする?」
「どうするも何も造らなアカンのだよ、コレは」
答えは簡単♪
「不眠不休」で60日を40日にするだけ。
ポップ工芸、前代未聞の大ピンチで御座います。
笑えない状況やが、ここは笑って行きましょう。
眉間にシワを寄せていては死ぬかもしれないので。
レッツゴー♪
え~、先ずは何はともあれ原型の製作をしないと始まらない。
前回のウォーキングwithダイナソーの時は完全に手作業で原型を彫ったんやけど、
今回は3DCADでデータを製作しCNC切削(機械彫り)で製作することにしました。
何故かと言うと、その方法だと、データが出来上がった所から順次切削工程に移行出来る点。
データ製作とNC切削の両方の時間をトータルで考えると手で彫るのと大して変わらないんだけど、
データの監修を部位ごとに画面上でお願い出来る点も時間短縮で利点かな。
3DCADでデータを製作する場合、おおまかに分けて2通りの方法がある。
1つは、完全に画面上でデータを製作する方法。
もう1つは対象物を3Dスキャナーでスキャンしてデータを製作する方法がある。
今回はなんと、配給元の20世紀フォックス映画様よりDEADPOOLのコスチュームをお借りする事が出来たので
それを着て3Dスキャンする事に。
但し問題が・・。
そのコスチューム、当然 現地アメリカで製作されたもの。
「デカい・・」
装着のマニュアルも同封されてたんやが対象身長が190~193cm以上みたいな事が書いてある。
まぁ、ワタクシ守屋も世間的には大型な180cmなので何とかなるやろ・・あとはデータで
チョイチョイと補正をかけて。。 とか余裕をブッこいていたんやが、何が何が。
腹抱えて笑うくらいサイズが合わない。
そこで急遽、20世紀フォックス映画O氏に連絡。
「ダメだこりゃ」と いかりや長介になりきって報告。
速攻で外タレの事務所に連絡頂きモデルを手配して頂く事に。
身長190ナンボのMr.マイケル到着。
どういう経緯で呼ばれたか、もひとつよ良く解ってないマイケルに、つべこべ言わせず、カタコトでスーツを
着させ、押さえつけてスキャン。
「ノープロブレム、ノープロブレム」と、丸一日、1回もトイレにも行かず頑張ってくれたマイケル君。
お昼休みもこのままの姿で、コンビニのカラ揚げ弁当食ってる姿には笑ってしまったが
さすが現役モデルのプロ根性見せて頂きました。 さんきゅーマイケル。
マイケルも頑張ってくれたんだし、こっちも頑張らんとあきまへん。
撮ったデータを合成、修正し、どんどん進めて行きます。
本当は靴底にはこんなのは無いんやけど、遊び心で、あえてカタカナ表記(あくまで日本発信の企画)なので「デッド、プール」のロゴとベルトのバックルの形状をを入れました。
恐らく20世紀フォックス映画の方からは激怒されるであろうとビクビクしてデータ監修に提出すると・・・
「イイじゃないですか!面白い!」と言って快諾。
20世紀フォックス映画、なんとジョークの解る会社なんや。(O氏、どうかしてるゼ!!)
DEADPOOL本人の役柄のイメージも加味して頂いた上での判断だったんでしょうが、
通常、こーゆー事は絶対に有り得ません。
我々造り手も普段からこんなアメリカンなジョークをちりばめて仕事がしたいと思っているんやが
夢を叶えて頂いてホント嬉しいです。
20世紀フォックス映画さん、ただただジョークを許してくれるユルい会社と思っていては痛い目に遭います。
当然、細部の監修は恐ろしいくらいに指摘があります。
今回の3Dスキャンデータは、あくまでMr.マイケル版DEADPOOLに過ぎません。
主演のライアン・レイノルズのセクスィ~なマッチョ体型とは程遠い細身なMr・マイケル。
監修ではライアン・レイノルズの頭蓋骨の形状の特徴まで指摘を受け、データ修正に臨みます。
ただ、当然国内では未公開の映画なので資料が乏しい為、肉付きなど細部のデータ製作は大変。
画像検索で色々かき集めて参考にします。
特に背部の資料は皆無・・・・。
20世紀フォックス映画さんより、この様なポスターやパンフなどの資料を頂いたりして参考にします。
画像検索していると、映画撮影中のスパイショットのリーク画像なんかも色々出てくるんやけど、
以外や以外、これらのスパイショットが一番参考になったりします。 皮肉な話ですが。。
そうして何とか鬼監修を経て出来上がったデータを基に、NC切削機でギュンギュン彫り出します。
1枚の大きいスチロールブロックからこんな風に彫り上がります。 ↑↑
小さい手に見えるけど、ホントはこんなにデカいのだ!! ↓↓
実寸の約3.7倍の大きさ。
マシンで彫り上がったパーツは細かい部分はユルく彫り上がっているので、そこは手作業で手直しを入れないと使えません。エッジを深く削ったりピンピンに尖らせたり。
手直しを入れたパーツ群に、お次はFRP(繊維強化プラスチック)を貼って行きます。
薄いガラス繊維を樹脂を用いて貼って行きます。
ここでも巧くガラス繊維を貼らないと折角エッジを立てた部品もユルユルな仕上がりになってしまう。
この工程は仕上がりに大きく影響します。
普段、仏の顔で接する事を念頭に置いているワタシですが、
職人達に対し、かなり厳しく怒鳴りつけてしまった。
ピリピリムードで作業は進みます・・。
おケツに群がる職人達。
今回、20世紀フォックス映画さんが顔の次にこだわっておられた部位。 それは 「お尻」
丁寧~にFRPを貼る様に指示。
この様に一つの案件にスタッフ全員投入して一ヶ月も作業するのはポップ工芸史上初の事です。
大抵、数人は違う案件を造っているんやが今回は別。
全員の意思や技量、モチベーションなどを一つにまとめる事の難しさを改めて勉強させて頂きました。
小分けにされたパーツにFRPを貼り、表面にパテを入れ、平滑に研磨した後、各パーツを
組み立てていく。 ↓↓
いくら高精度で切削されたパーツ群も微妙な寸法公差があります。
そのまま組み立てると上手く合わなかったり、パーツが大きい故に、ほんの数ミリのズレが先端では数センチの大きいズレになるので少しずつ削って修正を入れながら合わせていきます。
納品後、走行中に万が一外れては大事故に繋がり兼ねない重要なパーツは自分で取り付け。
未来のある若手職人達に責任を負わす訳にはいきません。
最もジジィである私が裁かれれば良いのです。
背中の刀などがそれにあたります。
内部に強固な鉄骨を入れて補強します。 ↓↓
ぶら下がっても大丈夫なくらいに補強しときました。
やっと全体が見えてきました。
この段階で、納品一週間前。 何とか予定通りに進んでいます。 ↓↓
全体に組み上がってはいるんやけど、そのデカさから全体のバランスを工場内で遠目に確認する事が出来ない。
頭の方からか、つま先の方からしか眺める事が出来ない。
真正面から遠目に眺めて確認出来ないので、最後の最後までドキドキな心情で製作。
お陰で抜け毛が止まりません。
健康診断で胃にポリープが複数見つかりました。
私の魂が擦り込まれたDEADPOOL像。
皆さんどの様な心情でこのブログを読んでいるのでしょう・・・。
鼻をほじりながらお菓子食べて適当~に読んでるでしょうけど。
まぁイイや。
暫しお付き合いを。
最終のサーフェーサー(下地剤)を吹きつけ、いよいよ塗装の工程へ・・・
塗装は最も重要な工程、と唱える造形屋、原型師も多いと思います。
どれだけ緻密に製作された原型でも、この塗装工程でヘタをこくと、
ただの学芸祭の装飾品と何ら変わりません。
慎重に行かなければなりません。
当然、塗装は弊社工場内で行なわれるんやけど、蛍光灯の灯りの下での
調色、塗装となる。
この蛍光灯の灯りがクセ者で、屋外の太陽光の下で見た時に、全く違った色味になってしまう。
その辺りの補正は職人の経験と勘だけが頼り。
通常、小さな人形とかなら1色塗っては屋外に持って行き、太陽光の下で確認出来るんやが
このデップー様は7メートル。
デカすぎて容易に出し入れできないのは当然、シークレットな製作状況下もありそれは出来ない。
今回、その調色を、冒頭で紹介したウォーキングwithダイナソーで小さい方の恐竜を製作した
垣内サンに一任。
何の迷いも無く調色してきたので若干心配っだった。
その下地色となる赤を塗る垣内サン。
誰もが鮮やか過ぎるのではないか?とも思われる色で塗装を始める彼女。
この画像を20世紀フォックス映画、O氏へ転送するや否や、早速、電話が・・。
「ちょ、ちょ、ちょっとこの色、明る過ぎやしませんか??」と。
「いやいや大丈夫。お任せください。」
きっとO氏は不安で一杯だったでしょう。
当然、デップー様はこんな色では御座いません。
もっともっと薄汚れてボロボロなのです。
ちゃんと次の工程を計算した下地色。
お次の工程は、このDEADPOOLのスーツの生地の特徴、
メッシュ地のラバーの様なレザー生地の様な質感を出す作業です。
製作当初は納期の関係から、このメッシュ調塗装は諦める様に他のスタッフから言われていたんやが、
私自身、どうしても諦めきれず、何とか時間を作って行なった作業。
スタッフのみんな、頑固ジジィの我侭を聞いてくれて本当にありがとう。
お礼に胃のポリープを一つずつ差し上げようぞ・・。
この7メートル像のサイズに合ったメッシュ生地を探しに何軒もの生地屋さんを手当たり次第に回ったんやが
結局イイのが探せず・・。
知り合いの、衣装などを製作する職人さんに相談。いくつもの候補を探し出してくださり、何とか
このデップー像にピッタリのピッチの生地を入手する事が出来ました。
お礼にこの職人さんにもポリープを・・・
もう、ポリープネタやめとこ。 しまいに怒られるわ。
何とか貴重な納品ギリギリな一日を頂きメッシュ調塗装を終え、次の色へ。。
赤い部分をマスキングし黒い部分の塗装へ。
画像では普通に黒一色で塗っているかの様に見えるけど、実は各パーツで黒のトーンを変えています。
画像で見える範囲だけでも5色の黒に塗り分けられています。
微妙な違い、解るかな? 解んねーだろーなぁ・・。
こーゆー誰も気付かない様な所やけど、モノが大きいだけに、単色で塗ってしまうと、物凄く安物臭い仕上がりになります。
先ほどのメッシュ塗装もやけど、たった数メートル離れると、メッシュ調であることは誰にも解りません。
でも、それらの色が重なって初めて出る色合いはベタ塗りや普通のボカシ塗装では絶対に出ないのです。
本物のメッシュ生地と同じ構造の塗り分けで初めて出る色合いです。
恐らく、今 全国を走り回っているこのDEADPOOL像が、この様な凝った塗装をされている事実を
誰一人知らないと思います。
でも本物のスーツとウリ2つな色合いである事は誰もが感じ取ってくれていると確信しています。
それでイイのです。 我々のお仕事はこーゆーものなのです。
ウンチクはこれくらいにして次行きまひょ。
次はエイジング塗装と呼ばれる塗装。
その名の通り年月が経ち、古ぼけた様な雰囲気や汚れた感じを出す塗装。
この作業は全体の統一感が重要な為、何が何でもワタシ独りで行なわせて頂く作業。
凹凸感も数倍に見せる事が出来る魔法の塗装。
でも一歩でもやり過ぎると取り返しの付かない恐ろしい作業である。
もし、万が一、この作業をやり過ぎてしまうと、極端な話、一旦 真っ白に塗り戻して1からやり直しです。
でも怯えて少な過ぎると特有の質感は出ません。
お次の工程。
エイジング塗装は、非常に塗膜が薄いのでキズ付き剥がれ易い為、それを保護する為、
クリヤー塗装を行ないます。 そう、女性のマニキュアで言う所のトップコート。
テカテカでご覧の様にローションまみれの様な変態チックな雰囲気が漂っております。
この状態では下ネタ大好物なDEADPOOL様でもさすがにご立腹でしょうから、ツヤの調整を行ないます。
上の画像をご覧になって、お解り頂けますでしょうか?
部位によって微妙にツヤが違う事を。
顕著なのはふくらはぎの所や肩パッド部分などのツヤ感。
本物の衣装は、これらの部分は完全にレザー素材でして、レザー特有のツヤ感が御座います。
ブーツも然り。但し靴底のゴム部分はツヤを控えてあります。
時間も無いのに大変だけどウソはつけないのよ。本物がこうなっているのだから。
次に予め造っておいた小物パーツも塗装し、貼り付けます。
ベルトや帯類は実際に布を縫製して製作。
時間が無いのに時間の掛かる事ばっかやってます。
でも、こーゆーところで質感がグッと高まるから。
やっと完成でございますー!!
どのアングルから見ても抜かりの無い様に最終チェック。
グローブのカーボンケブラー繊維の様な模様もキッチリ再現。
これも大変やったなぁ・・。
スタッフみんなイライラしてたのを思い出す・・・・・・・・
アップで見られても大丈夫。
この質感に20世紀フォックス映画 O氏も太鼓判を捺して下さいました。
完成したのは納期当日。トラックが到着する直前まで色々やってました。
間髪入れずトラックへ積載です。
思いの他 「重い・・・」
手積みとなるのは解っていたので最小限の重量になる様、FRPの厚みを調整したけど、
デカものは重い。
お陰さまで積み込みの際、ウチのスタッフの水内君の腰が玉砕。
使い物にならないお爺さんになりました。
約3週間休んでおられます。
どーしましょ。
そしていよいよ旅立ちの時がやってまいりました。
最近はメディアへの露出がめっきり減ってしまった「せんとくん」が、ここぞ!とばかりにカメラ目線で自分アピールしております!
皆さん、デップー様もだけど、せんとくんも応援してあげてくださいな!
今の所、せんとくんの方が国内では知名度高いんだから。
翌日、大阪駅のグランフロント内で除幕式が行なわれました。
体調不良で入院されてた第64代横綱 曙 太郎氏が入院先から駆けつけてくださいました。
当日はあいにくの雨模様で除幕がスパッ!と出来ず、ズルズルと除幕でしたが、それがまた焦らされて
ドキドキしました。
この時、初めて真正面から遠目に眺める事が出来ました。
やっぱデカいわ。
物凄いモノを任されてたんやなぁ・・と今更ながら実感。
3Dスキャンの時、扮してくれたMr.マイケルも京都から式典に駆けつけてくれました。
DEADPOOLに合わせて真紅のシャツを着てくれましたよ。
粋な計らいですな、さすがモデルさん。
このアドトラックは6月5日まで巡航します。
運行スケジュールはTwitterなんかで確認できます。
#デップー発見 #デッドプール #DEADPOOL なんかで追跡してみて。
日本の映画の公式ツイッターでこのアドトラックについてライアン・レイノルズ本人がリツイートしてくれたんやで!
それと、コミック原作者のロブ・ライフェルド氏もTwitterでネタとして取り上げてくれたり!
も~コレ凄すぎと思わない!?
世界もが注目するこのトラック、是非追っかけて目に焼き付けてちょーだい!
ポップ工芸のスタッフの魂がすり込まれたDEADPOOL像です。
ギックリ腰で死にかけの水内クンにもエールのお言葉を頂戴できれば
きっと回復が早まるはずです。
ライアン・レイノルズ氏にこの気持ち、届かないかなぁ・・・。
届くとイイなぁ。
映画 「デッドプール」 は6月1日(水) TOHOシネマズ日劇ほか
全国ロードショー です!!
http://www.foxmovies-jp.com/deadpool/
世界120カ国でぶっちぎりNo.1の大ヒット作!
みんな!映画館へ急げ!!!!
ポップ工芸のブログ史上、最も長文になり申し訳ございませんでした。
少々熱くなり過ぎた様です。
長々とお付き合いありがとうございました。
守屋でした。
次は何のネタ書こうかな。
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