どーもどーも。 守屋です。
ドタバタドタバタしてますぅ~!!ってばかり書いて製作日記らしいブログを
暫く書いてなったんで今回は真面目に製作日記です。 製作の日記。
なので潔く前置きは無し!(思いつく面白ネタが無いだけ)
よって、いきなり本題へ。
もう製作日記のネタは山ほど腐るほど溜まってるんやが、タイムリーなやつを。
タイトルにあります映画 「テルマエロマエ 2」 (http://thermae-romae.jp/)が公開になるにあたって天下の「東宝」様より阿部寛演ずるルシウスの像のオーダーを頂きました。
パート1では確か直立したダビデ像を模したルシウスが宣伝に使われていたと思うんやけど
パート2では円盤投げ像のタイプ。
コレね ↓↓
コイツを等身大で、って事で。
ぬはっ! 難しそうじゃん。!
彫刻系のお仕事は数年ぶりなのでドキドキです。
しかも顔は知らぬ人も居ないくらいの有名人。
ここんとこ、等身大のお仕事がやたらと多です。
恐らくキン肉マンを製作したあたりから妙に増えてきた気がしまする。
あれが世間的に評価頂いた結果なのかなぁ~、、なんて思ったり。
まだブログには書いてないけど先月も等身大のチャーリー浜さんを造ったばっか。
来月も人物ではないが超有名な怪獣の等身大(人間大ですが)のお仕事も頂いております。
有り難いおはなしで。
クライアント様から身体のポーズについての資料は上のイラストのみ。
顔などは撮影時のショットを複数頂きました。
ルーブル美術館に行けばミュロン作:「円盤投げ像」を見て資料を集める事は出来るんやが
そんなお願い社長にしたら、社長は「私は貝になりたい・・・」といって深い海の底へ沈んで帰って来なくなるので遠慮しました。
円盤投げのポ-ズの資料が乏しい中、困窮しているワタシに女性スタッフが一言、
「守屋さん、全裸になって写真撮って資料にしたらエエやん」と。
・・・バカかお前さんは。
人生折り返し地点を過ぎた初老と呼ばれる域に属するこのワタシに脱げだと?
つーか大体誰が撮影すんねん。 恥ずかしいにも程があるわい。
でもこのポーズの資料は日常生活の中でその辺にいくらでもあるはずも無い。
こんな時、ワタシが頼りにしている施設があります。
「ルーブル美術館」ならぬ「ルーブル彫刻美術館」 てのが三重県にひっそりとあるのです。
そこには有名な彫刻のレプリカ(レプリカといっても本物から型取り複製した確かなモノ)が
ズラリと並んでいます。 ミロのビーナスだって有るんだゾ。
そこは撮影も自由。 しかも、貸し切りか!ってくらい空いてます。
そこへウチのスタッフを派遣してガッツリ撮影してきてもらいました。
なぜ、ワタシ本人でなく若手スタッフKさんにお願いしたかと申しますと。。。
今回の案件、ボディ部分をその若手スタッフKさん(ウォーキングウィズダイナソーのブログで小さい恐竜造ってた女子)にチャレンジさせてみようと思ったから。
本人に納得いくまでその像に触れ、資料を撮り、早速トライさせてみました。
本人も最初はこの案件を受けるかどうか悩んでいたんやが「私、やってみます!」と
言ってくれたので大変嬉しかったのを覚えています。
最近の若いのはチャレンジ精神も無ければ上手くなりたい欲も無い。
ホンマにアカンのばっかりなんやが彼女は違う。
この貪欲さ、皆 見習うべし。
アウトラインをスチロールブロックに描きニクロム線でカット。
バランスを考えながら余分な部分を落として行きます。
しまった・・ 画像回転させんの忘れてた。 スマン。
スチロール造形は度胸も必要。
ビビッてチマチマ削っていては日が暮れます。
大胆に行きましょう。 でも。 その ひと削りが命取りになる場合も。
粘土の様に「盛る」事は出来ないのだから。
頭の中にしっかりデッサン図がイメージ出来てないと手が止まります。
出来るだけ彼女には声をかけないでソッとして彫って頂きました。
でもさっき書いた様にスチロール造形は彫刻。 盛る事は基本出来ないので
要所要所で確認をしました。
丁度、上の画像の段階で、ワタシ的に少しデッサンに狂い(彫り過ぎ感)を感じレフリーストップ!
左肩(向かって右肩)とバスト部が数ミリ削り過ぎてしまっているので急遽交代。
彼女もかなり悔しかった様です。
でも物凄い勉強になっであろうと思います。
皆さん、彼女に大いなる拍手を送ってあげようではないか!!!
これをバネに大きく躍進するであろう! Kさんガンバレ!!
さてワタシに交代です。通常あまりしないんやが削りすぎた部分(首左からヘソを結ぶライン)をバッサリ切り捨て、新たなスチロールブロックを貼り付け、再度彫刻。
胸に縦にズバッとその傷が見えるかな?
右大胸筋も板を貼り足し彫り直し。
スタッフKさんが撮ってきてくれた資料のお陰で難しい部分の彫刻もクリア。
足などはこの後の工程でFRPを多く(厚く)コーティングするので
それを逆算し数ミリ細くしています。
その辺りも経験がモノをいいます。
完成し、東宝様の監修を受けます。。。。
無事に監修、一発OK頂きました。
頭部と手足首は細かなクオリティが要求されるので別で製作します。
手首は一度石膏に置き換え細部を再彫刻。
その後再びシリコンで型取りし、FRPに置き換えます。
ここから肝心な頭部の製作。
今回は彫刻の石像風の表現という事なので毛穴などのあまりに細かな表現を必要としないケースなので水粘土(陶器などで使うアレ)で製作しました。
もっと細かなディテールを要求される場合は油粘土やNSPという粘土を使うこともあります。
先ずはベース盛り。
まだこの段階では松田優作がミイラ化した様な感じです。
まだまだ阿部寛氏には程遠いお坊さん。 ↓↓
この段階あたりの進捗画像をクライアントに送りますと、たいがい心配されます。
「ホントに大丈夫かなぁ・・・。」 て。
何となく見えてきた感じもしますがまだ微妙・・・。ヒャダイン氏の様
ホイ!完成♪ どーよ? 阿部阿部しとるでしょ?
髪は石像なので少しペタッとさせて。
で、頭部も東宝様へ監修送り。
有り難く一発OK頂きました。
さてさて、ボディ、頭部共に原型の監修頂いてウカウカ喜んでてはアカンのです。
なにを隠そう、この頭部、ボディ製作をスタートする直前にワタシの親父が病気で入院後亡くなり
10日ほどスタートが遅れるアクシデントがございまして。。。。
クライアント様には大変ご心配をお掛けする事態となりました。
東宝様、クライアント様の恐ろしいくらいの迅速なご対応のお陰でこの遅れを
取り戻す事が出来ました事、心より感謝いたします。
通常、監修や、一つの質問に対し返事が戻ってくるのは1~2日前後かかります。
ですが今回、ほとんど数時間で回答頂けました。驚きです。
早速ボディ部をFRPでコーティングします。
若いお姉さんにこねくり回され、阿部氏もご満悦な様です。
その後右足をスパッ!とタテに切断し、内部金物を作ります。
この円盤投げのポーズ、凄く不安定な格好なのでしっかりパイプを仕込んでおきます。
膝までパイプが入り太ももの付け根までアングルが溶接で入ります。
ほぼ右足1本で支えられる格好です。
別々に造っていた手足首と頭部を接合。
この後、全体の表面をパテ処理し研磨したり血管や筋など、細かな部分のテクスチャーを
入れていく。
あまりに色白なので屋外に出して日光浴させます。 ↓↓
屋外に出し、屋内の照明とは違う環境の下で細部のチェックをします。
照明や光の強さが違うと凹凸の見え方も大きく変わるので色々なシチュエーションでチェック
します。
OKな感じなので備品の仮付けをして再チェック。
これらの備品は塗装後に取り付けるのでこの段階で仮付けし、また外しておく。
ケロリン桶とタオルは本物を取り付け。
タオルは装着後、樹脂でガチガチに固めます。
じゃないと風に吹かれてギャランドゥ丸出しになっちゃう。
さぁ、やっと塗装ですわ。
さっき日光浴したので、すっかりガングロに日焼けしました。
先に影となる部分から塗っていきます。
通常とは逆の塗り方ですな。
指と指の間やシワなどの隙間に黒い色を入れる為。
それから凸部となるところへ明るいホワイト系を重ねる。重ねる。重ねる。
最初に入れた黒が唇の間や鼻の穴、眼球の淵などにイイ感じに残ってるの解るかなぁ?
今回の色味は東宝様より頂いたイラストに準じる指示だったので少しグレーがかった暗い感じ。
個人的にはもう少し明るめのアイボリーぽい系統の大理石調で塗ってみたかったなぁ。
まぁ、これだけは好みの問題ですな。
屋外に設置され、水垢などでスジ状に汚れた石像の雰囲気も塗装で表現します。
左足のくるぶしあたり、よく見てもらうと解るけど、大理石が欠けて細かなボツボツした
窪みもちゃんと表現しておきました。
ケロリン桶は取り外せる様、ビス2本で固定。出来るだけ目立たない場所に。
タオルもバッチリ固まってやっと完成!!
日光が強く当たると陰影も違って見える。
何かホンマに動き出しそうな気になる・・・。
白塗りの大道芸のパフォーマーの様である。
骨格や筋肉、筋の通り方などちゃんと調べておかないと全体はまとまらないです。
どのアングルから見てもおかしな部分があってはなりませぬ。
本当に人体の造形は神経をつかう。
だって誰が見てもおかしな部分はすぐに解りますもの。
最終の監修も無事にパスし、いつもの運送屋へチャーター便の手配の電話を入れる。
「3月の25日に東京へ人形一体送って欲しいんやけど?」
運送屋 : 「無理ですわ」
「はぁ?無理って何が?」
「年度末と増税と月末が重なってトラックが一台も空いてませんねん」
こんなこと初めてである。
運送屋も初めてだそうな。
仕方ない。自分で運ぶ事に・・。
ハイエースに寝かせて載せ、片道7時間の阿部氏とのドライブです。
まだ公開前なので顔や身体は隠して積載したんやがつま先が少し見えてて、
まるで遺体を運んでるかの様な気分でサービスエリアでは妙に緊張した。
無事に配達も終え、翌26日(風呂の日)に六本木ヒルズの特設会場でお披露目となりました。
見よ、この豪華なキャスティングを!!
何やろ・・両サイドのジジィが気になってしょうがないんやが・・・。
完全にこのジジィらに目線持って行かれとるがな。 アカンやん、負けた。
もっと彫刻勉強してジジィに負けない造形品、世に贈れる人間になりたい・・・。
そう思う次第。
次回も等身大フィギュアネタ書きます。
ではでは。